コーヒー・ブレイク(1996)

Title
コーヒー・ブレイク(1996)
Date
2020-08-31 - 2020-10-02

現代美術センターCCA北九州では、「コーヒー・ブレイク」(1996)を、8月31日から10月2日まで上映します。

CCA北九州は、美術館やギャラリーといった枠組みにとらわれない活動を可能にする、開かれた場を目指し、インターナショナル・コミッティーのメンバーを含む多くのアーティストやキュレーターの協力のもと、1997年5月にオープンしました。「 コーヒー・ブレイク」は、CCA北九州の設立を記念して、1997年5月のオープン直前に東京、京都、北九州の3会場で開催されたシンポジウム「Let’s Talk About Art」と、シンポジウムに参加したCCAのインターナショナル・コミッティーであるアーティストやキュレーターへのインタビューによって構成されたドキュメンタリー映像です。

タイトルは、「重要なことや斬新な発想は、あらかじめ予測される成果を求める会議や仕事からではなく、そのコーヒー・ブレイクの時間にある、とりとめもない会話から生まれる」という考えからつけられたものです。「コーヒー・ブレイク」に登場するのは、今でも世界の第一線で活躍しているキュレーター、アーティストたちです。 彼らが今から20年以上前、どのような考えをもってそれぞれの活動に取り組んでいたのか、インタビューから垣間見ることできます。

例えば、現在ロサンジェルス現代美術館の館長を務めるクラウス・ビーゼンバッハは、90年代前半にベルリンのクンストヴェルケ現代美術センター(KW)を設立、当時はKWを拠点にアーティストとともに次々と斬新なプロジェクトを発表していた時でした。 ビーゼンバッハは、アーティストとともに働くこと、展覧会を企画すること、評価することについての当時の自分の考えを述べています。また、現在ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーのアーティスティック・ディレクターを務めるハンス・ウルリッヒ・オブリストは、当時はパリ市立近代美術館に籍を置きながら、展覧会という枠にあてはまらないプロジェクトを次々と展開していました。 異なる分野間における交流と対話を重要視し、展覧会を開くだけではなく、対話や交流の「場」をつくることへの可能性について語っています。 その他にも、今では現代アートを語る上で重要な展覧会の一つとされる「大地の魔術師」展を1989年に企画したジャン=ユベール・マルタンは、その展覧会を企画するに至るまでの考えと構想について話しています。

「美術史」というアカデミズム上の分類と境界線によりはじかれるもの。 美術館、ギャラリーを含む、美術界のシステムや構造的な枠組み。 美術館/展覧会の可能性、限界、問題点。 スペースの問題。場の問題。 こうした一つ一つの疑問や問題点に、いかに実践することで向きあっていくのかについて、それぞれが持論を展開していきます。 私たちがよく目にする「キュレーターの仕事とは何か」「いい展覧会と評価する基準は何か」といった問いに対する答えも、彼らのインタビューから、一つではないことがわかるでしょう。

アーティストたちへのインタビューは、アートに興味を持つようになったきっかけに関する質問から始まります。 ダニエル・ビュレン、マリナ・アブラモヴィッチ、ローレンス・ウィナー、ハミッシュ・フルトンは、今では近現代のアートを扱う美術館では必ずと言っていいほどコレクションにその作品が入るアーティストですが、彼らが活動を始めた60ー70年代は、現代アートを扱う美術館はわずかであり、アート市場もほとんど存在しませんでした。 ニューヨークでは新しい動きが見られたものの、ヨーロッパに当時あったのは「過去の栄光だけ」(ダニエル・ビュレン)で、まさに「無」からのスタートでした。そこから彼らがどのように新しい概念を生み出していったのかについて語っています。 そしてアーティストたちも、その方法や試行錯誤の過程は、一人ひとり大きく異なり、それぞれが独自の方法を模索し切り開いていったのです。
CCAがオープンした1997年頃は、すでに世界で数多くの現代アートの展覧会やプロジェクトが行われるようになり、美術館でも現代アートの展覧会が次から次へと開催されていました。 同時に、「アート」にとどまらず、分野を超えて活動していくことの重要性が高まっていた時でもありました。CCAは、その疑問に対しての答えや考えを実践し、対話をしていく場、様々な事柄や思考が同時進行で行われる場として始まったのです。

 2020年は、私たちを取り巻く多くの事が変化を免れることのできない状況にあり、アートの世界もまた、かつてない変化の中にいます。 そんな中で、今回初公開となる「コーヒー・ブレイク」は、今では数え切れないほど行われているビエンナーレやトリエンナーレ、展覧会、アートのプロジェクトについて、一度立ち止まって再考する時間になるのではないでしょうか。

「コーヒー・ブレイク」( 1996) 60:00
サスキア・ボス クラウス・ビーゼンバッハ マリナ・アブラモヴィッチ ハミッシュ・フルトン ローレンス・ウィナー ジャン=ユベール・マルタン デヴィット・エリオット ハンス・ウルリッヒ・オブリスト ダニエル・ビュレン 河本信治 中村信夫 三宅暁子
監督 前澤哲爾  撮影 大房潤一

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Artist
マリナ・アブラモヴィッチ ハミッシュ・フルトン ローレンス・ウィナー ダニエル・ビュレン 
サスキア・ボス クラウス・ビーゼンバッハ ジャン=ユベール・マルタン デヴィット・エリオット ハンス・ウルリッヒ・オブリスト 河本信治 中村信夫 三宅暁子 監督:前澤哲爾  撮影:大房潤一
Date
2020-08-31 - 2020-10-02