Title |
昼光の下では蛍も他の虫とも同じに見える |
Date |
2013-04-01 - 2013-05-10 |
CCAプロジェクト・ギャラリーでは、リマソール(キプロス)、パリ、ベルリンを拠点に活動するクリストドロス・パナイトウ(1978年リマソール生)の新作を発表しました。
アキコへ
きっと君はヴェニスで無事に運河を渡っているんだろうね。僕は、仕立て屋さんからちょうど戻ってきたところなんだ。彼はとても上品な紳士で、僕に会えてとても嬉しいと言っていたよ。店に来た外国人は僕が二人目で、最初はアメリカ兵で、かなり昔のことらしい。彼の年格好やここと長崎との近さを考えて、それがいつ頃のことかは敢て訊かなかった。仮縫いは今度の土曜日で、僕たちは一緒に出かけて、その後でもう一着の上着を探しに 行くんだよね。」
母には、彼女の鞄の素材を使って作った僕の靴を郵送してくれるように頼んでおいたよ。それと、ここに添付した写真のことで、印刷会社で打ち合わせがある。この写真は、去年の秋、友だちのパトリッツィオとイタリアのオスティアを日帰りで訪ねた時に撮ったものなんだ。その話の残りはノブオに話しておくよ。」
この展覧会のタイトルとして、次の文を日本語に訳してもらえるかな。「In the light of the day the fireflies are like any other insect.」元は俳句なんだけど、うろ覚えなのと翻訳のせいでひどいものになっている。でも、元の俳句を探さないで、そのままこの英語を訳してくれないかな。学生時代にどこかで読んだのだけど、今だにひどく心惹かれるんだ。この文章は、この展覧会でいくつかの作品がまとまることの、つかみどころのない言外の意味となるんじゃないかな。
今日はとても風が強いよ。家でキャンディ・キャンディのアニメの続きを、もう何話か見るつもりだ。日本に来てから、キャンディ・キャンディの全話をギリシャ語で見られるサイトを見つけたんだ。最後に見た話で、アンソニーはあどけない微笑みを浮かべるキャンディにこう言うんだ。「今日から、僕たちが出会った日が、君の誕生日になるんだ。」キャンディはアンソニーを情熱的に見つめていた。この台詞を思い出すと今でも気持ち 悪くなるけれど、許してあげないとね。話のなかで、アンソニーはもうすぐ死ぬことになっているんだから。彼らがそのことを知らないのに、自分はそれを知っているというのは堪えがたいね。彼が死ぬ場面を見た子供の頃を思い出すよ。アンソニーが乗っていた馬が、狐用の罠にかかってしまうんだ。この場面を見てからの何日かは、学校に行けなかったよ。
北九州で君の帰りを待っているよ、それから、山の向こうに一緒に行こうね。それまでには、アンソニーは死んで、キャンディはテリーに会うだろう。山の向こうで、開花前の藤を見たいんだ。
クリストドロス
クリストドロス・パナイトウは、リサーチ・プログラムの教授として、2013年3月1日から30日まで、CCA北九州に滞在しました。
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